足場を構成する部材には、いくつかの種類があります。主流は鋼管で組む鋼管足場です。
鋼管足場も、単なるパイプもあれば、枠型の専用部材など、いくつか種類があります。
場所や条件によっては丸太足場を組むこともあります。
しかし、伊勢神宮で20年に一度行われる神宮式年遷宮に代表される神事祭礼の際には、古式にのっとり丸太足場を組まれました。
なぜでしょうか？
丸太足場のメリットや作り方は？
丸太足場とは、杉、ヒノキ等の細い間伐材を鉄線で締め上げて固定する昔ながらの足場のこと。
日本においては、足場といえば古くから丸太足場のような木材でつくられていました。
まっすぐな細い丸太を、建て前の済んだ構造物の周りに組んで、その後の工程をやりやすいように足場を組むこの方法ですが、今ではほとんど見かけることはなくなりました。
安全性の観点から金属製の足場に取って代わりつつありますが、必要材料が少なくすむため、住宅や低層ビル等の塗装、解体工事にはいまだに使われている場合が稀にあります。
日本の資源利用合理化推進運動が林野庁から唱えられるようになり、そのため木材にかわり大手の建設業者の間では鉄製の足場の開発の研究が本格化しました。
その後外国産木材の利用拡大や、化石燃料の広がりによるにより、国内の木材は需要が伸び悩み、国内の森林資源はその有用性を失い、林業は衰退の一途をたどっていったのです。
丸太足場は、建築物の形状に合わせて自由に組み合わせることが可能で、必要に応じてその場で加工することもできます。
しかも鉄材に比べて弾力性があるので、建築物にやさしく、傷をつける可能性が減少します。
そのため、国宝や重要文化財の改修工事の多くの現場で丸太足場を見かけます。
こうした改修工事では、技術の伝承という歴史的使命をもって丸太足場を使い続けているといいます。
丸太足場には天然木を使っているためは、世界中から拝観に訪れる観光客に工事中の違和感を和らげる効果もあるようです。
そうした癒し効果もあるのです。
しかしデメリットも存在はします。
材質が木のため劣化が早いこと、そして木材の中の劣化がわかりづらいことです。
また、材質が一定ではないので、丸太ごとで強度が異なり強度計算がしづらく、また濡れるとすべりやすく危険が伴います。
丸太自体も、均質な材料ではなく材料を置くスペースが狭く、片手の作業となります。足場の固定に家と足場をつなぐ必要があります。
そして、伝統的な建築物にはマッチしますが、現代的な建物を建築するときには少々ミスマッチで見た目が悪いということなども挙げられます。
丸太足場の緊結方法や安全基準は？
丸太足場を使用する場合は、安全衛生規則の基準に適合しなければなりません。
丸太足場の現代版とも言えるのが単管足場とよばれるものです。丸太足場の緊結方法・組み方は単管足場と非常に似ています。
伝統の組み方を伝承するという意味はありますが、現在の足場のほとんどはくさび式緊結足場であり、丸太足場は現在実用性のある足場技術とはいえません。
やはり、重要文化財などの建築上の美観の問題や、構造物にやさしいといった点や、伝統の組み方を伝承するという意味しかないようです。
まとめ
丸太足場は、杉・ヒノキなどの木材を使った足場のこと。
環境に優しくないという理由で、現代では鉄製の足場がよく使われるようになっています。
丸太足場のメリットは重要文化材などの建築上の美観の問題や構造物にやさしいといった点で使われることがあります。
現代の主流であるくさび式緊結足場がほとんどで、歴史的な理由でなければ、丸太足場が使われる機会はなさそうです。
