職長は現場の作業員を指揮、監督をする立場の人のことを指します。
主に作業範囲や作業内容を事前に確認し、現場監督(元請)や他の作業の職長とのミーティングを通してより安全性の高い作業内容を決定します。
作業の熟練度が高いからといって、職長が務まるわけではありません。
安全や作業監理に対しては初心者であるため、座学や実習を通して学習する場=職長教育の受講が必要となります。
職長教育とは?
職長教育とは、先述した職長(=作業現場において労働者を直接指揮監督する者)に就く場合、事業者が実施しなければならない安全衛生教育のことです。
これは、労働安全衛生法の第60条で義務付けられている法定教育となります。
実施が義務づけられているのは建設業だけでなく、製造(一部適用除外)、電気、ガス、自動車整備、機械修理などさまざまで、現場で直接労働者を指揮、監督する者であれば班長、作業長など職長という名前でなくても受講が必須となります。
職長教育に試験や資格はあるの?
では実際の職長教育は、どのようなものか見ていきましょう。
職長教育はあくまでも安全衛生教育にあたるため、資格試験とは異なります。
そのため、職長教育は講習を受けることが前提で、講習の最後に試験(テスト)が課されることはありません。
ただし、18歳以上の方しか受講することができません。
また、職長教育を修了してから5年経過するごとに、4時間の追加講習の受講(職長等に対する能力向上教育)が必要になります。
以下は実際のカリキュラムです。
■作業方法の決定および労働者の配置に関すること・・・2時間
作業計画の立て方や、現場の適正人数の算出方法などを学びます。
■労働者に対する指導または監督の方法に関すること・・・2.5時間
現場での適切な指導方法や、部下とのコミュニケーションの取り方など、現場を指揮、監督するための具体的な方法を学びます。
■危険性または有害性等の調査、その結果に基づき講ずる措置、設備や作業等の具体的な改善方法・・・4時間
危険な場所や実際の事故事例を知り、労働中の災害における原因や予防法、安全衛生面に関わる点検方法などを学びます。
■異常時、災害発生時における措置に関すること・・・1.5時間
何らかの異常や労働災害が発生した際、適切な初動対応や救命措置など、万が一の事態の対応方法や措置を学びます。
■その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること・・・2時間
作業員の安全意識向上や安全点検の方法について、実際に体験しながら学びます。
■安全衛生責任者の職務等・・・1時間
安全衛生管理者としての職務、安全衛生管理体制の仕組み、安全衛生管理の計画の立て方などを学びます。
職長教育の受講方法は?
職長教育を受講する場合、労基連や建築関係の各協会で開催される講習会、Web講座で受講するといった2通りの方法があります。
それぞれ特徴が異なるので、自分が受けやすい方法を選びましょう。
労働基準協会連合会の受講方法
労働基準協会連合会(労基連)は各都道府県に支部があります。
主に平日の朝から夕方まで開催しており、2万円弱の費用が必要です。
労基連の会員の企業に適用される割引料金制度などもあります。
各協会の受講方法
労働災害防止を目的とする建設業労働災害防止協会(建災防)、建設関連の教習機関である中小建設業特別教育協会といった協会でも受講できます。
2日間の受講方法は労基連と変わりませんが、土日でも受講できる点で業務に支障をきたすことなく受講できます。
Web講座の受講方法
インターネットで講座の動画を視聴し、専用のテキストを併用して勉強する方法です。
2日間拘束される講習会に行く時間が取れない場合、Web講座を検討すると良いでしょう。
通勤時間や休憩時間を活用することもできます。
ただし、Web講座の場合は最後に修了のための内容理解を確認する試験が行われます。
まとめ
職長教育では、適切な作業方法を学ぶだけでなく、作業員への指導方法や関係の築き方、労働災害防止対策など、あらゆる側面の知識を学ぶことができます。安全を確保することで、より安心な現場を実現し、施工の質を向上させていきたいですね。