建設現場等で直接労働者を指揮する立場である職長。
労働者の健康と現場の安全を確保する上で大変重要な立場にあります。
そのため、労働安全衛生法では事業者は職長等に対し安全衛生教育(職長教育)を行うよう規定されています。
建設業では、職長が安全衛生責任者に選任されることが多いため、近年では「職長教育」と「安全衛生責任者教育」が統合され、「職長・安全衛生責任者教育」の実施を推進しています。
表題の「職長教育グループ討議」は、この職長・安全衛生責任者教育のなかで行われるグループディスカッションの名称です。
職長教育グループ討議とは?
職長教育グループ討議とは職長教育におけるグループワーク、グループディスカッションのことを指します。
職長教育を開催している企業・団体によって名称は多少異なります。
調べてみたところ、(社)安全衛生教育研究所が職長教育グループ討議という名称でグループワークを行っているようです。
建設業に係わる事業者は、職長・安全衛生責任者の職務に従事することとなった後、おおむね5年ごとに職長・安全衛生責任者の能力向上教育に準じた教育を受けさせることになっています。
そのため、職長・安全衛生責任者の能力向上教育の一環として職長・安全衛生責任者教育講習会でグループワークを行い、講習の目的や意味をより理解させ、実践に取り入れられるようにしている企業・団体が多いのです。
職長教育グループ討議の内容
先ほどご紹介した(社)安全衛生教育研究所の職長教育グループ討議の内容を例にご紹介させていただきます。
こちらの職長教育グループ討議ではまず4〜7名前後のグループをつくり、職長・書記・発表・コメント・メンバーと役割分担をします。
グループ討議の課題と目的は以下の通り。
課題1:健康KY演技
目的:コミュニケーションの取り方、健康確認をし、適正配置を理解する
課題2:危険予知訓練
目的:
・コミュニケーションをとりながら、正しい作業手順を指導、これが結果的に安全行動に繋がっていく事を理解する
・単に危険回避だけがKYの目的ではなく、正しい作業手順から行動目標を立てることの重要性を理解する
・災害発生のプロセスを明確にし、論理的に考える
・指差し呼称の意味・効果を知る
課題3:リスクアセスメント
目的:
・人の行動面からアプローチする災害防止活動の限界を機械設備物により解決するという考え方を理解する
・安全がもうかるという事、結果として経営の安定につながる事を職長安責者の立場で理解する
課題4:KYカードを使い一人KYをグループで行う
グループ討議では上記の項目について個人&グループで考えて結論を出していきます。
さらにこのグループ討議の間、立ち居振る舞いや話す姿勢、声の大きさ、リズムなどもチェックされているそう。
コメントも具体的に良かったところ、残念だったところ、こうすればもっと良くなるという改善点など具体的な意見を要求し、「全体的に良かった」などという抽象的な発言は認めないとするなど、かなり厳しく行われているようです。
職長や安全衛生責任者として現場の安全を守る立場なので、こうしたグループ討議を通して行動の目的や意味をより深く理解し、現場で最適解となる指示を出せるように成長していってほしい、そんな思いが込められたグループワークですね。
座学を受けて得ただけの資格では実践で力を発揮することはできません。
定期的に講習を受け、意義のあるグループワークを通じて他者理解や指揮する立場であるという自覚を培っていけると良いですね。
参照:(社)安全衛生教育研究所
まとめ
今回は、職長教育グループ討議の内容についてご紹介させていただきました。
いかがでしたでしょうか。職長・安全衛生責任者の能力向上教育(職長教育)におけるグループワークは企業・団体によって名称がさまざまですが、今回はグループ討議という名前でグループワークを行なっている(社)安全衛生教育研究所という団体のグループワークの内容をご紹介させていただきました。現場の安全を守る立場である職長・安全衛生責任者はこうした安全衛生に関わる講習を定期的に受講し、自身の能力の向上と現場での指揮の重要性をより深く理解できるよう積極的に参加していきたいものですね。