規定では地上から2m以下は高所作業と認定されないため足場を組む必要がなく、作業のために横移動の幅をなるべく広く取りたい時に、脚立に足場板を緊結して脚立足場として使用することがあります。
3.6mを超える足場板の使用は3点以上で支持する労働安全衛生規則がありますから、4mの足場板を脚立足場にしたい場合、脚立による3点支持をすれば使用条件を満たしている訳ですが、現場では長尺の足場板を3点支持で脚立足場とするのに消極的です。
足場板を脚立3点で支持するのはNG?
高さ2m以下は高所作業としていませんので足場を組む必要はなく、労働安全衛生規則で足場板を脚立3点で支持するのを禁止していません。
ですが、企業が自主的に定めた安全ルール、1部の地方自治体の労働基準局では禁止にしているところがあります。
労働安全衛生規則に照らすと厳密にはNGではありませんが、事実上NGと言って差し支えない状態です。
足場板を脚立3点で支持して使ってはいけない理由
厚生労働省はホームページで「建設業におけるリスクアセスメント(リスクの特定・分析・評価)のすすめ方」の「6 リスクの低減措置の検討及び実施」で足場板を脚立3点で支持することに関するリスクに言及しています。
以下の表にて使用状態ごとの危険度をご紹介いたします。
※支持間隔は1.8m【1スパン】以下
※危険度の大きさ・可能性は×→△→〇の順、リスクレベルの高さはⅢ→Ⅱ→Ⅰの順となっています。
■地上からの高さ1.5m
使用状態 | 危険度 | 事故可能性 | リスクレベル |
①高さ1.5mの脚立天板に幅50cmの足場板を緊結 ・高さ1.5mから転落する ・端部で墜落するおそれがある ・昇降時に手がかりがない ・作業床が狭いので危険にさらされる |
× | △ | Ⅲ |
②両端部から昇降する長い脚立を使用し 中央は1.5mの脚立天板に幅50cmの足場板を緊結 ・高さ1.5mから転落する ・作業床が狭いので危険にさらされる |
× | 〇 | Ⅱ |
③3台とも長い脚立にして幅75cmの足場板を緊結 ・高さ1.5mから転落する |
× | 〇 | Ⅱ |
④3台とも長い脚立にして幅75センチの足場板を緊結、 作業床を地上1.2mに下げ、 床から80cm上に片側手摺を付ける (作業床を下げて怪我を小さく) |
× | 〇 | Ⅰ |
⑤④の状態にして安全帯を手摺にかけて使用する | 〇 | 〇 | Ⅰ |
足場にしている中央部の脚立に昇降専用の脚立を緊結させて更なる安全性の確保を図っている企業もあります。
しかし、3台とも長い脚立を使用した場合は中央の脚立を跨がなければならず、事故の危険性を確実に低減できたと言えるのかは疑問です。
すでに足場板を脚立3点で支持して脚立足場としていた状況で事故が起きる可能性を排除するために、企業や地方自治体の労働基準監督局が独自に3点支持による脚立足場の使用を禁止しているところもあります。
まとめ
今回は足場板を脚立3点で支持するのはNGなのか、その理由はなぜなのかを詳しく解説しました。
厚生労働省の「リスクアセスメント(リスクの特定・分析・評価)の実施手順」を見ても分かるように、作業床を地上1.2mまで下げても事故の重大性は最大レベルのままです。
法令で決められていないとしても、やはり確実な安全策は足場板を3点支持の脚立足場としないこと以外にはないでしょう。