仮設足場の安全基準・努力義務の規定はどんどん高くなっているのに、事故総数は一定の範囲で増減を繰り返すのみで劇的な改善は見られません。
事故の要因の一つである足場材の落下事故では、労働者だけではなく第三者を巻き込む悲惨な事例もあります。
足場材の落下事故を未然に防ぐにはどうすればいいのか
足場で起きる足場材の落下事故の原因は、主に床面に置いた工具・部材が手すりと布板の間から滑り落ちてきたというものですが、人通りや車の往来が激しい場所では、危険回避策を取っていないと足場材が第三者の上に落ちることもあります。
高度からの落下物は死を招く重度災害の危険度が高く、落下事故対策は必須です。
そこで、労働者に対する措置としては厚生労働省が、第三者に対する措置としては国土交通省が足場材の落下事故防止策のために規則・基準を設けました。
基準を要約すると
「足場から水平距離5m以内に落下物によって工事現場の周辺に危害を防止するため、足場の必要な部分に鉄網もしくは帆布で覆うか同等以上の効力を有する防護措置をとること」
となります。
事故対策は「あるかもしれない」と想定し、事前に行っておかなければ意味がありません。
労働者の安全確保には通常から、床付巾木の設置と壁面側への防網(安全ネット)取り付け、前面にはメッシュシートを取り付けるようにしておきましょう。
第三者の安全確保には作業現場の立地や建物の条件に応じて、足場メッシュシート・垂直養生ネット・防音パネル・ネットフレーム・防護棚(朝顔)のどれかを設置することが足場材の落下事故を防ぐ最善の対策となります。
足場材の落下による悲惨な事故事例と対策
記憶に新しいのは2019年11月19日に和歌山で起きた、歩行者に足場材が落下し死亡させてしまった事故でしょう。
この日、12階建てビルの屋上にある看板補修工事終了に伴い足場の解体作業が行われていました。
撤去中の長さ1500mm・太さ450mm・約5kgもある鉄パイプが40m以上の高さから下を通行していた26歳男性の頭部に当たり、病院に搬送された4時間半後に亡くなってしまいました。
男性は大阪在住の銀行員で、和歌山に出張で訪れていたところ、不運にも事故に合ってしまったのでした。
被害者の1mほど後ろを別の人が歩いていたという目撃証言もあり、もしかしたらその人も巻き込まれていたかもしれません。
その後の調べで、この工事現場は防護策が取られておらず、被害者こそ出なかったものの4日前にも鉄パイプ落下事故が起きていたことが分かっており、2020年5月20日に、足場工事を請け負った会社と同社社長ら2人が、和歌山労働基準監督署から労働安全衛生法違反容疑で和歌山地検に書類送検されています。
地元商社の事務所が営業を続けている状態での作業ですから、朝顔の設置が最適な安全対策として機能したはずの事故事例です。
同じような事故を起こさないためにも、事故事例を真摯に受け止め、落下事故の対策に努めましょう。
まとめ
今回は足場材の落下事故を未然に防ぐ方法、悲惨な事故事例と対策をご紹介しました。
足場材の落下は、どんなに気をつけていても起こることがありますが、それによる事故の発生を未然に防ぐことはできます。
悲惨な事故を無くすには、普段から安全を強く意識して、厚生労働省・国土交通省・労働基準監督書が定めている規則・基準の遵守に努めて下さい。