作業者の安全を守り、現場の作業効率の向上をはかるための大切な役割を担う職長。
職長はその役割の重要性から、職長教育を受講する義務があります。
また、義務ではないものの、再教育の研修に参加することも求められています。
現場の安全衛生を守るために理解をより深める目的があります。
職長とは
労働安全衛生法の規定上、職長は現場において作業員を直接指導監督する者のことを指します。
建設現場では、人、物、資材が絶えず動いており、それに伴って危険要因も存在します。
作業全体の状況を指揮監督する者を選び、管理させる必要があるとして、必ず一人は職長を配置する必要があります。
建設業や製造業のほか合計6業種については労働安全衛生法第60条によって所定の安全衛生に関する教育(いわゆる職長教育)の受講が義務付けられています。
建設現場においては職長と安全衛生責任者を兼務することが多いため、「職長・安全衛生責任者教育」を実施するよう厚生労働省から通達もされています。
労働安全衛生法の職長教育の中で期待されている職長の実際の職務は以下の通り。
・作業手順を正しく定める・・・安全かつ効率的に作業が進むよう手順を確認し、定期的に見直しなどを行う
・作業方法を改善する・・・常に問題意識を持ち、問題を発見した場合には、直ちに改善する
・作業員を適正に配置する・・・作業員の能力や体調、資格などを把握し作業がいかに効率よく進むかを考え人員配置を行う
・作業者に対して教育指導を行う・・・安全かつ正しい作業が行えるように必要な知識や技能を身に付けさせる、部下である作業員のやる気を起こさせるように努める
・作業者に対して指示・監督を行う・・・作業員の能力を把握し、具体的な指示を出し、その後も指示をした作業がしっかりできているかどうか監督する
・危険性及び有害性を評価し、対策を実施する・・・機械などを使用する際に、事前に確認を行い危険性や有害性について評価を行う、危険性や有害性が発生している場合には改善をし安全を確認できてから作業を行う
・環境の改善、保持に努める
・常に4S(整理・整頓・清掃・清潔)を心がけ快適な職場環境の維持に努める
・安全衛生点検を繰り返し行う・・・機械設備等は始業前のみならず定期的に点検を行い、異常の早期発見に努める
・異常時の措置は適切に行う・・・現場内での異常には早期に気付き、適切な措置を行うとともに再発防止に努める
・災害発生時の措置は適切に行う・・・火災発生時には被災者の救助を優先し、二次災害の防止に努める、再発防止対策を行う
・作業員の安全意識の高揚に努める・・・労働災害を防ぐためには、作業員それぞれが高い安全意識を持つ必要がある、職長は作業員の安全意識高揚のために、安全活動の実施を計画し、継続的に行う
・創意工夫を引き出す・・・部下である作業員に対して、作業方法や作業改善方法などの提案や工夫を出させる
職長の再教育の期限は10年?職長の再教育の仕組みについて
上記のように、職長は現場の安全衛生を保つこと、業務効率を向上することに重きを置いた重要な役割を担っています。
前述したように建設業では、職長の職務に新たに就くことになった人は安全衛生のための教育を行わなければならないとされています。
一定の要件を満たす建設現場に入った事業者は、安全衛生責任者を選任しなければならないとされていて、
安全衛生教育等推進要綱(平成3年1月21日付)では、 職長・安全衛生責任者のそれぞれについて、事業者が初任時及び概ね5年ごと又は機械設備等に大きな変更があったときに、能力向上教育に準じた教育(再教育)を受けさせるよう求めています。
また、元方の事業者は、現場に入る職長等及び安全衛生責任者が初任時の教育及び再教育を受けているか確認するよう求められています。
職長・安全衛生責任者に対する教育は、事業者が自ら実施するほか、外部の安全衛生団体が実施しているものを受けさせることもできます。
安全衛生教育等推進要綱では、再教育について以下のように定められています。
「職長等、安全衛生責任者のそれぞれについて、事業者が、初任時及び概ね5年ごと又は機械設備等に大きな変更があったときに、能力向上教育に準じた教育(再教育)を受けさせること」。
このため、職長や安全衛生責任者は、再教育を受講しなければいけません。
再教育のカリキュラムは以下の通りです。
No. | 講習科目 | 実施内容 |
1 | 職長及び安全衛生責任者として行うべき労働災害防止に関すること(120分) | ・建設業における労働災害発生状況 ・労働災害の仕組みと発生した場合の対応 ・作業方法の決定及び労働者の配置 ・作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法 ・異常時等における措置 ・安全施工サイクルによる安全衛生活動 ・職長等及び安全衛生責任者の役割 |
2 | 労働者に対する指導又は監督の方法に 関すること(60分) |
・労働者に対する指導、監督等の方法 ・効果的な指導方法 ・伝達力の向上 |
3 | 危険性又は有害性等の 調査等に関すること(30分) |
・危険性又は有害性等の調査の方法 ・設備、作業等の具体的な改善の方法 |
4 | グループ演習(130分) | 以下の項目のうち1つ以上を実施 ・作業事例研究 ・危険予知活動 ・危険性又は有害性等の調査及び結果に基づき講ずる措置 |
表題の結論としては職長の再教育の指標は10年ではなく5年です。
10年と間違えられやすい理由としては、労災の発生などに伴う損害賠償請求の訴因になる「安全配慮義務」の時効が10年であるからだと思われます。
また、特別教育実施に関する書類の保存期間は3年となっています。
年数がいくつも出てくるので混同しないように注意しましょう。
まとめ
今回は、職長の再教育の仕組みについて詳しく解説いたしました。いかがでしたでしょうか。
職長は現場の安全衛生を保つために重要な役割を担い、作業効率の向上にも寄与する大切なポジションです。
そのため、職長教育を修了した後も概ね5年ごとに再教育を受けるよう求められています。
作業者の命に関わる大事な責務を担うので、定期的に教育を受けて認識を改めて再確認していきたいですね。