この度の労働安全衛生法改正により、2019年から安全帯の規格品目に変更がありました。
それに伴って2019年8月より、これまで製造・使用されてきた規格品が製造禁止となりました。
さらに2022年1月2日より、現行の規格品の販売及び着用が全面的に禁止されることとなります。
そこで気をつけなければならないのが、6.75m以上の高さ(建設業は5m)で作業する場合のフルハーネス型安全帯(以下、フルハーネス)の着用義務化です。
なぜフルハーネスが義務化された?その背景と内容
厚生労働省より、2018年度から2022年度までを期間とする「第13次労働災害防止計画」という計画が発表されています。
内容は、死亡災害の撲滅、過労死の防止、働き方改革の推進、疾病を抱える方の健康確保、化学物質等による健康障害の防止、企業・業界単位での安全衛生、安全衛生管理組織の強化、国民全体の安全や健康意識高揚など、8つの重点事項について強化・推進し、労働による死亡や疾病のリスクを抑えるというものです。
この計画の内容は多岐にわたり、様々な業種で対応が迫られていますが、やはり建設業界にも大きな影響を与えており、この度の労働安全衛生法改正が行われました。
このように、重点項目の一つである「死亡災害の撲滅」を目指した対策の推進から、建設業界の死亡事故でもっとも多い「墜落・転落」の防止するために、フルハーネスの着用が義務化されることとなりました。
従来の胴ベルト型安全帯は、1本のベルトを胴回りに巻きつけるため、墜落阻止時の衝撃荷重によって緩み、ベルトの位置にズレが生じることによる胸部・腹部への圧迫や地面への落下の危険性がありました。
また、墜落阻止時に身体が「くの字」となり、腹部などへの圧迫が大きくなる可能性、D環の位置が身体の重心位置(腰部付近)よりも下(脚部側)になる「逆さま姿勢」となる可能性など、非常に多くのリスクを抱えていました。
しかし、フルハーネスは、墜落阻止時に身体が安全帯から抜け出さないように複数のベルトで構成されており安全性が高いことから、死亡災害件数を大幅に減少させることが期待できます。
さらに、新しい規格の導入や使用の義務化を進めることで、より具体的に死亡災害件数の減少を実現することを目指しているのですね。
これらのことからフルハーネスを使用することが義務化されたわけですが、
- 高さが2m以上の箇所
- 作業床を設けるのが困難
といった条件が揃う(ロープ高所作業を除く)現場でフルハーネスを用いる場合、安全衛生特別教育(学科4.5時間、実技1.5時間)の受講が義務化されているのも抑えるべきポイントです。
フルハーネス義務化についてよくある質問
フルハーネス義務化についてよくある質問をまとめました。
新規格のフルハーネスについて
・新しい規格の商品はどこで購入すれば良い?
・製造年月日の確認方法は?
・第一種ショックアブソーバーと第二種ショックアブソーバーの違いは?
・旧規格品との具体的な違いは?
旧規格の安全帯について
・旧規格品をいつまで使用することができる?
・新規格品との併用は?
その他
・特別教育を未受講の状態でのフルハーネス使用の罰則は?
・ハーネスとフルハーネスの違いは?
法改正後はわからないことがいっぱいですよね。
少しでも正しい情報を集めていく必要がありますので、受講の際など不明な点があればぜひ質問してみてください。
まとめ
今回は、フルハーネス義務化の背景や内容、良くある質問についてご紹介しました。
労働災害防止のための取り組みである以上、義務違反にならないよう、制度について熟知する必要がありそうです。
特別教育の受講の際、不明な点について積極的に質問してみてはいかがでしょうか。