これは私のある友人の話です。
友人が街を歩いていると、ある工事現場が目に留まりました。
足場業者が資材を上から下に投げ渡していたのです。
小さな金属部品に関しては地面にそのまま落下させており、ドゴッという音を立てています。
現場のすぐ横には歩道があり、人通りもあります。
友人は「危ない!もし人が通ったらどうするんだ!」と、ヒヤヒヤしたようです。
作業員同士で上から下に資材を投げ渡したり、直接地面に落下させたり。
すぐに終わる作業とはいえ、これらの危険なやり方は当たり前のことなのでしょうか?
足場屋が資材を上から下へ投げるのは普通?危なくないの?
解体時に資材を上から下へ投げる行為は認められている行為なのでしょうか?
その答えは「決められたルールに従って行っていれば違反にはならない」です。
多くの解体業者は「手渡し」で解体作業を行っているようですが、資材を上から下へ投げ落とす解体方法も、条件付きで認められているようです。
地面に落とす解体のやり方が認められる条件とは?
続けて、地面に落とす解体方法を行うための条件について確認していきましょう。
その条件には、以下の3つがあります。
- 物体が落下することにより危険を及ぼす恐れがあるときは、防網や立入禁止区域を設置するなどの危険を防止する措置を講じる必要がある
- 立ち入り禁止表示、及びその為の警備員を配置している
- 落とす時の声掛けなどを適切に行っている
他にも足場の高さなどによって細かくルールが定められていますが、必ず満たす必要があるのは上記3つの条件になります。
3m以上の高所はさらに条件が厳しくなる
高さ3m以上の高所から物体の投下を行うことは禁止されています。
このことに関しては、労働安全衛生規則第536条・537条にも記述があります。
もし、3m以上の高所から解体した物体などを投下する場合は、特別な措置を講じなければなりません。
具体的にどのような措置を講じれば良いかというと、先ほどご紹介した3つの条件に加えて「シューター」と呼ばれる筒状の投下設備を設けなければなりません。
また、投下設備は、ゴミ投下用シュート又は木製によるダクトシュート等のように、周囲に投下物が飛散しない構造とすることが条件付けられています。
資材の受け渡し中に起きてしまった死亡災害事例
これは、ある工場の解体工事で使用した足場の解体作業で起きた死亡災害です。
資材の受け渡し中の出来事でした。
足場の4層目の作業床にいた労働者が持っていた交さ筋かい2組のうち1組を落下させてしまい、地上で同筋かいを受け取る役割をしていた作業員を直撃。
鎖骨を貫通した筋交いは胸まで到達し、その作業員は出血性ショックで亡くなりました。
原因は上の作業員が物を落として下の作業員に当たる状態にあったことだと思われます。
事故の詳細は公開されていませんが、物体の落下によって危険を及ぼす恐れがありながらも、必要な措置が講じられていなかったのでしょう。
このような悲しい死亡災害を繰り返さないためには、危険を及ぼす確率が低い解体手段を採用することです。
掛かる手間や費用ではなく、有効性で選ぶべきです。
今回の事例であれば、吊袋で資材の受け渡しが行われるのがベストだったでしょう。
シューターでは筋交いを通過させることは出来ませんし、4層から地上までの高さは約7mあります。
足場の高さが3mを超える場合は、条件を満たしていたとしても手渡しでの受け渡しを避けた方が良かったかもしれません。
まとめ
今回は「足場屋が資材を上から下へ投げるのは普通なのか?」についてご紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
資材を上から下へ投げるやり方は条件付きで認められていますが、基本的には「手渡し」あるいは「吊り袋」や「ロープ」などを使用した受け渡し方法が推奨されています。
人命を守ることを最優先し、最も安全な方法を採用するようにしましょう。