足場からの墜落災害は全般的に減少傾向でしたが、近年増加傾向にありました。
さらに、そのうち約9割の墜落災害が、安衛則で定められた墜落防止措置を実施していなかったことが判明。
足場からの墜落防止対策が強化されるに至りました。
労働安全衛生規則(足場等関係)の法改正のポイント
今回(平成27年)の法改正では主に以下の5つの項目について法改正が行われました。
以下でそれら5つのポイントについて説明していますのでご覧ください。
1.作業に特別教育が必要となる
現行の安衛則では足場の組立て等の作業を行う労働者に対しては、特に特別教育の義務はないと定められていました。
しかし今回の改正では、足場の組立て等の作業についてはその周辺の業務を含め特別教育を義務付けました。
受講資格、実務経験の制限等も無いため、誰でも受講することができます。
ただし、講習を受けていたとしても、18歳未満の場合は足場の組立・解体の実務に就くことはできませんので注意が必要です。
2.作業における墜落防止措置を充実させる
現行では、吊り足場、張り出し足場、5m以上の構造の足場が対象でしたが、5mを大幅に引き下げ2m以上の構造の足場が対象とされ、ほとんどの足場で墜落防止措置を講じる必要性が出てきました。
さらに、足場の緊結などの作業を行う時は幅40cm以上の作業床を設置し、安全帯の取り付け設備を設置した上で、労働者に安全帯を使用させることが義務付けられました。
3.作業後に注文者も点検が必要となる
現行では、建設業、造船業の元請事業者等の注文者は、強風等の悪天候や中震以上の地震の後には足場の点検、必要に応じて修理を行わなければなりませんでした。
しかし、それに加えて足場や作業構台の組立て、一部解体や変更などを経た場合についても、次の作業を開始する前に足場を点検しなければならなくなりました。
4.作業床に関する墜落防止措置を充実させる
足場における高さ2m以上の作業場所に設けられる作業床の要件に追加・変更がありました。
現行の制度では幅40cm以上床材間の隙間は3cm以下にするよう定められていたのに加え、床材と建地との隙間は12cm未満とすることという項目が追加されました。
また、作業の必要上、足場や架設通路、作業構台から臨時的に手すりを取り外さなければならない場合、これらの設備を設けないことや取り外すことができるとされていましたが、その場合関係労働者以外の立ち入りを禁止し、作業終了後直ちに元に戻さなければならなくなりました。
5.鋼管足場(単管足場)に関する規定の見直し
現行では、鋼管足場の建地の最後部から測って31mを超える部分の建地は、鋼管を2本組とすることとしていましたが、建地の下端に作用する設計荷重が最大使用荷重を超えない場合、その必要がなくなりました。
その他忘れてはいけないポイント
今回の改正に伴い、安衛則に定められている法定の墜落防止措置以外に実施をお願いする項目も公表されました。
以下にも留意して安全の確保をしていく必要がありますね。
- 足場の組立図の作成
- 足場の組立て等作業主任者の能力向上を図りましょう
- 上さん・幅木の設置など「より安全な措置」をとりましょう
- 足場の点検は、十分な知識・経験を有する方で、組立てなどの作業の当事者以外の方に任せましょう
- 足場で作業を行う労働者などの安全衛生意識の高揚を図りましょう
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の安衛則の法改正は墜落災害の防止のために大幅に強化されたという印象です。
しかし、今回の改正についても現場の作業員や主任者が知らない、知っているのに実行しないのでは全く意味がありません。安衛則の遂行こそ、安心安全な現場の創出に繋がるという意識を持ち、作業にあたりたいものですね。